ケベック・シャルルボアしあわせキュイジーヌの旅

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列車はあの滝から出発した

ケベック・シティの北東に位置するシャルルボアには、ル・マシフ鉄道(Train of le Massif de Charlevoix)に乗って行くのが一番だ。おいしい料理を食べながら、雄大なセントローレンス川や紅葉の山々など、車窓に広がる景色を楽しむ、まさに「しあわせ」いっぱいの列車だ。

※ル・マシフ鉄道は2015年夏まで運休中。秋以降のサービスについては近日発表予定です。

始発駅はケベック・シティの郊外、モンモランシー滝の目の前。「駅」と書いたけれど、滝の上へと伸びるゴンドラ駅がル・マシフ鉄道の駅舎でもある。

それにしてもだ、ここに来ると僕の左足の親指がうずくんだ。なぜかって?

冬のケベックで、凍ったモンモランシー滝のアイスクライミングに挑戦した。もちろん、自分の意思ではなく、なんとなくそういうことになってしまった。

日本を出発する前、適当に伝えておいた靴のサイズが合わず、実はこのアイスクライミングで僕の左足の親指の爪は見事に剥がれてしまった。半年も経つのに、爪はまだ完全には生えきっていない。しかも若干、変な形で伸びつつある。

ついでに言うと、右足の親指の爪のダメージも相当なもので、剥がれはしなかったけれど、いまだ生え変わりの最中だ。だからうずくんだよ、この滝を目の前にすると。

ただし、モンモランシー滝に文句ばかり言っている僕も、きちんとお詫びをしておかなくてはならないことがある。

凍った滝つぼに「遊泳禁止」みたいな看板があったのを見て、あの時、凍った滝を登るのと滝つぼを泳ぐのではどっちが危険なんだ、と毒づいてしまった。結論を言うと、やっぱり泳がない方が身のためだと思う。

滝つぼから離れた場所なら大丈夫そうな気もするけれど、下手をしてセントローレンス川に流されてしまったら大西洋まで一直線だ。

忠告しておく。モンモランシー滝では泳がない方がいい。どっちか選ぶなら、氷の滝を登る方がいい。悪いことは言わないから。

もうすぐ出発の時刻だ。旅立ちを待つ列車の背後には、白いモンモランシー滝と真っ青な空が広がっている。それに、ちょうどゴンドラが列車の上へと通り過ぎていった。本当にいい天気だ。空がなんて青いんだろう。

走り出した車内には、ガラス窓から朝日がいっぱいに差し込んでくる。

目を明けていられないぐらいに眩しい朝日は、乗客である僕たちの体をもポカポカと温めてくれる。

車内ではゆったりとした時間が流れていく。乗客たちはみんな、ほどよく肩の力が抜けた感じ。美しい風景が現れても、騒ぐでもなく写真を撮りまくるでもなく、静かにその風景を楽しんでいる。この空間は実にいい雰囲気だ。

あったかくて、まぶしくて、目を細めながら外の景色に目をやっていると、コーヒーにミルク、バターやジャムが運ばれてきた。

角度のきつい朝日がミルクピッチャーに反射し、ジャムにはその光がとろんとした透明感を与えている。

僕はパンのかごからミニ・デニッシュとミニ・マフィンを選んだ。いくら「ミニ」とはいえ、さすがに3つは多いな、と思ってミニ・クロワッサンには手を出さなかった。まだまだ僕自身が、肩の力が抜けていないのかもしれない。

もっと肩の力を抜いていこう。これは「しあわせキュイジーヌの旅」なんだから。

ケベック・シャルルボアしあわせキュイジーヌの旅
  1. 「しあわせ」いっぱいの旅が始まる
  2. 列車はあの滝から出発した
  3. 「しあわせ」なチーズの王国
  4. 可愛いけれど、おいしそう
  5. 緑色のケチャップ
  6. 「シルク・ド・ソレイユ」が舞い降りた
  7. 再び「ワンダケ」へ
  8. 「創始者」がいた店
  9. ハンク鈴木さんに出会った
  10. おいしすぎる島(1)
  11. おいしすぎる島(2)
  12. 冬の誘惑
  13. 続・再び「ワンダケ」へ
  14. 「しあわせ」すぎる夕食
  15. 「しあわせ」な人たちが暮らす場所

著者プロフィール

平間 俊行 (ひらま としゆき)

報道機関で政治・選挙報道に携わる一方、地方勤務時代には地元の祭りなど歴史や文化に触れる取材に力を入れる。現在は編集部門を離れ、別分野の事業を担当しながら度々カナダを訪れ、カナダの新しい魅力を伝え続けている。