ケベック・シャルルボアしあわせキュイジーヌの旅

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緑色のケチャップ

ル・マシフ鉄道のメニューに新鮮なシャルルボアの野菜を提供してくれる「レ・ジャルダン・ドゥ・サントル(Les Jardins du Centre)」。

僕はここで、ケベックの人々に愛されている緑色のケチャップと出会うことになった。

企業名を出しても大丈夫なんだろうか、ハインツやカゴメといった僕らの頭に浮かんでくる、あの赤いケチャップと同じように、材料はトマトなんだ。

けれど、色はまったく違う。

使うのは赤く熟したトマトではなく、緑色のままのトマト。これを中心に、他にもいろいろな野菜や果物を入れてケチャップを作るんだそうだ。

色のほかのもう一つの大きな違い。それは、さらさらのピューレ状ではなく、切った野菜の形が残っているところだ。だから普通のケチャップのように「かける」とか「付ける」のではなく、食べる時は「乗せる」とか「添える」ことになる。

トマトや野菜、スパイスをいっしょに煮て瓶に詰める。ケベックの人たちにとっては馴染み深い、冬の保存食なんだそうだ。

ケベックの人たちは瓶に詰めたケチャップを買うだけでなく、それぞれの家で自家製ケチャップを作るので、ここでは青いトマトもたくさん売られている。

緑色のケチャップに驚いていた僕は、ひとくち味見させてもらってもう一度驚かされた。甘酸っぱいこの味は、いろんな料理に合うな、とすぐに分かった。豚肉とか魚のソテーなんかに、たっぷりめに「乗せて」食べたら最高だろうと思う。

ピクルス代わりに茹でたソーセージの横に「添える」のもいいんじゃないか。

いろんな野菜がいっぱいあって、楽しくて楽しくて店内をウロウロしていたら、もうすぐ畑でトウモロコシを収穫するから行ってみるといい、と教えてもらった。

青空の下に畑が広がっている。斜面の向こうはもちろんセントローレンス川だ。

トウモロコシの畑というのは、刈り取った後も収穫前と変わらず幹がぴんと立っているので、どうやって刈り取るんだろうと常々、不思議に思っていた。トラクターで一気に、ということなら、畑には幹がペシャンコになって倒れているはずだ。

聞いてみたらなんのことはない、「手で収穫するんだよ」とあっさり言われた。数人の男性が、幹をかき分けてトウモロコシ畑に分け行っていく。

小型のブルドーザーみたいなのが畑を進んでいって、もいだトウモロコシを手早く前部の受け皿みたいなところに入れていく。結構、刈り残しも目立つけれど、みんなあまり気にしてるふうでもない。

勧められて、生のトウモロコシを食べてみることにした。皮をはぐと、薄い黄色と白のツブツブがぎっしりと詰まっている。ツブツブはきらきらと光っている。

細い毛を手早く、おおざっぱに取り除き、ガブリとかぶりついた。とたんに、全部のツブツブから一斉に「ジュース」が吹き出てきた。

ブシャー、っていうのは最近人気のゆるキャラのギャグだから使うのは気が引けるけど、文字通り、口の周りというか、顔中にトウモロコシの「ジュース」がブシャーっと飛び散った。

「ジューシー」って言葉があるけれど、これは「ジューシー」とか「みずみずしい」とかじゃなくて、ジュースそのものだ。

甘い。さわやかな、くどくない甘さだ。本当に新鮮で甘いトウモロコシって、実は「ジュース」なんだと思ってしまった。

新鮮で、誰が作ったのかが分かる安心なシャルルボアの野菜が彩るル・マシフ鉄道の料理の数々。しっかり味わわないと本当にもったいないと思うんだ。

ケベック・シャルルボアしあわせキュイジーヌの旅
  1. 「しあわせ」いっぱいの旅が始まる
  2. 列車はあの滝から出発した
  3. 「しあわせ」なチーズの王国
  4. 可愛いけれど、おいしそう
  5. 緑色のケチャップ
  6. 「シルク・ド・ソレイユ」が舞い降りた
  7. 再び「ワンダケ」へ
  8. 「創始者」がいた店
  9. ハンク鈴木さんに出会った
  10. おいしすぎる島(1)
  11. おいしすぎる島(2)
  12. 冬の誘惑
  13. 続・再び「ワンダケ」へ
  14. 「しあわせ」すぎる夕食
  15. 「しあわせ」な人たちが暮らす場所

著者プロフィール

平間 俊行 (ひらま としゆき)

報道機関で政治・選挙報道に携わる一方、地方勤務時代には地元の祭りなど歴史や文化に触れる取材に力を入れる。現在は編集部門を離れ、別分野の事業を担当しながら度々カナダを訪れ、カナダの新しい魅力を伝え続けている。